

牧野技術サービス顧問・倉沢寛氏は、牧野技術サービスのなかでも一目置かれる存在。牧野技術サービスが設立された当時からサービスエンジニア一筋。お客様からの絶大な信頼と、確かな技術、そして何よりも愛情あふれる倉沢氏の人柄に魅せられ成長していった若手も多いと聞く。
「当時の日本は、高度経済成長期最中で活気がありました。牧野フライス製作所は日本の技術革新の一端を担っていたと言ってもいいでしょう」
牧野フライス製作所の製造部で機械の開発に携っていた倉沢氏。NC工作機や複合加工機の先駆け的な存在だった会社での仕事は十分にやりがいのあるものではあったが、マシニングセンタの国産第一号機の開発(1966年)に関わったことで、その後の人生が大きく変わっていった。
「マシニングセンタを開発し、国内外問わず展示会を開催しました。先代の牧野社長も一緒にいろいろな場所に出かけました。海外なんてほとんど経験がなかったのですが好奇心だけで行きたい!と。機械を通してたくさんの人と触れ合えることが楽しくて、もっとお客様とコミュニケーションをとれる仕事がしたいと思ったんです」
製造部からNCサービス課というお客様対応の部署に異動願いを出し、1977年の牧野技術サービス設立とともに出向。それ以来、牧野技術サービスを支える凄腕サービスエンジニアとして今日まで走り続けてきた。


「今でこそ営業所は世界中にありますが、当時は営業所なんてありませんでした。海外では、仕事以上に食事や宿泊先など生活面をフォローするのが大変でしたね。ですが楽しかったので新しい機械ができると展示会やお客様との交渉に世界中を飛び回っていました。そうしているうちに世界各地にお客様ができたので、サービスの拠点があるほうがお客様にとっても便利だろうと考えました」
自身の経験から「絶対必要だ」と提案し、国内および世界各地に営業所を設置。さらに機械のトラブルに迅速に対応するために24時間対応のコールセンタを設置するなど、会社の成長期に尽力した倉沢氏。会社とともに自分も成長したと胸を張る。
「若手を育成するのは、結局はお客様のためです。若い人のなかにはお客様との会話が苦手という人が多い。何かフォローできないかと、2010年の夏から『メンテくん通信』という会報を作り配ることにしました。牧野技術サービスの新着情報やメンテナンスのアドバイスを掲載しているので、この『メンテくん通信』を手渡しながら、会話のきっかけづくりに役立てばと思いましてね」
倉沢氏はアイデアマン。現状をいかに改善するべきかを常に考えているその瞳は、いつまでも輝きを忘れることはない。

何よりもお客様とのコミュニケーションが大事という倉沢氏だが、誰もが認めるベテランの倉沢氏は、どうやってお客様との関係性を築いてきたのだろうか。
「私はとにかく顧客満足主義。すべての行動を顧客視点で考えることを心がけています。それは自分たちの都合で仕事を進めないということだと思うのです。何かお客様から要望がある。『また無理なことばかり言って…』と思ってはダメです。こちらに落度がないと思っていても、お客様に何か言われるということは、やはり何かあるんですよ。人がいないから出向けないとか、パーツが準備できないとか、そんなのはこっちの都合であってお客様には関係のないこと。現状を踏まえて、今できることを考えなければお客様はいつまでたっても満足してくれません。クレームをゼロにすることが理想ですが、クレームが出たときこそお客様の目線に立って、今何が求められているのかをちゃんと見極めなければいけない。そして、少しでも満足してもらって、信頼関係を深めていく努力を私はしてきました」
人と人が向かい合うことを大切にしてきたことが伺える。
「今は携帯電話もメールもあるし業務連絡が便利になりましたが、そんな便利な時代だからこそコミュニケーションを大切に。社員同士でも直接会って話すことを心がけています。そこから業務の改善点が見つかることも非常に多いですし、社員や現場の悩みも直接聞けますしね」

工作機械業界の最前線で活躍してきた倉沢氏は、工作機械業界のこれからをどう占うのだろうか。
「これから技術革新は想像もつかないぐらいのレベルで進むでしょうね。当然、工作機械の出番も増えていくわけです。近い将来、日本を駆け巡るであろうリニアモーターカーにも工作機械で造った部品は使われています。いずれは地球を飛び出して、宇宙ステーションの中でも活躍するかもしれない。これから工作機械がどれだけ進化するかによって、未来は変わると思うんですね。ですが、技術の進歩だけでは不十分です。何度も繰り返しますが、機械に対して、仕事に対して興味を持たなければ意味がない。興味を持たなければ何も始まらないんです。よく仕事を覚えるのが難しいと言うけれど、興味を持てば難しいことも難しいと感じなくなりますよね。未来のことはよくわからないけれど、仕事に情熱を持ち続けていれば、どんなことも乗り越えていけるんじゃないでしょうか」
これまで何百人もの採用面接を行い、新人教育にも携ってきた倉沢氏が、未来の牧野技術サービスを担う新人に求めること。それは、やはり倉沢氏が何より大切にしてきたコミュニケーション能力だ。
「お客様の中には年配の方もいらっしゃいます。親子以上に年齢が離れていれば、それだけで話が噛み合わないのは仕方ないです。ですが、気に入ってもらえたら本当に可愛がってくれます。だから臆することなく、年配のお客様や先輩社員にぶつかっていってほしいのです。最初はうまくいかなくても自分の伝えたいことを精一杯表現して、相手を理解しようと努力すれば、必ず突破口は見えてきます。だから、あきらめてはいけませんね」

アジア地域のサービスを数多く経験し、国内サービス体制の充実を図るべく営業所設立にあたる。また、サービス員採用と教育にも従事し、ここ10年ほどは韓国サービス体制の充実を図っている。